社長の映画-シネマブログ
昨年はコロナ渦中で、今迄の様に映画館に気軽に行くことが出来ず見逃した映画が多い一年でした。
今年もこの状態はまだ続くのかもしれませんが、一刻も早く元の状態に戻ることを祈ります。
そんな中昨年公開したものでDVDや配信で鑑賞可能なおススメ映画を紹介します。
昨年1月に公開された〈風の電話〉です。
この映画は東日本大震災で家族を失い、一人生き残った高校生ハルが叔母と広島県の呉市で生活している場面からはじまります。その祖母が倒れてしまい家を飛び出して、震災の遭った岩手県大槌町までのロードムービーが描かれていきます。
途中で助けてくれる人の協力もあり、大槌町町までたどり着くというストーリーです。
震災から10年、忘れたいもの、忘れてはいけないもの、生とは何か、人々の心に触れる映画です。
この映画は音楽と効果音が無く、ドキュメンタリーのように展開していくことで、高校生ハルが実在しているが如く現実の世界にいるかのように引き付けられていきます。
ラストシーンに登場する〈風の電話〉は電話線は繋がっていませんが、亡き人と繋がっていると、大槌町に存在する電話で今までに3万人以上が訪れ利用したと言われています。
行き場のない寂しさや苦しさを電話によって少しでも心が開放されると、今も後を絶ちません。
台本無しでアドリブで家族と電話をするラスト10分のハルの映像は胸が締め付けられる衝撃の映画です。
震災後、数々の作品がつくられてきましたが、これは間違いなく胸に刻まれる1本です。
演出的な要素を省いた画面からは役者の力量を実感します。
尚、このハル役のモトーラ世理奈はキネマ旬報の新人女優賞を受賞しています。
139分の長尺ですが、この主人公ハルと一緒に映画の中で旅をしてほしい、そんな作品です。