今月の映画紹介
今回どうしても紹介したい映画があります。
「家族を想うとき」Sorry We Miss You (原題)。
イギリスはニューカッスル地方を舞台にした家族4人の話です。
介護福祉士をしている妻アビー、多感な高校生の息子セブ、未だあどけなさが残る12歳の娘ライザ、そして家族のためにフランチャイズ契約して独立した主人公の父リッキー。
リッキーはドライバーとしてトラックバンを買うために、妻の車を下取りにして仕事に就きますが、予想を超える理不尽なシステムによる過酷なノルマとペナルティー労働条件に振り回されていきます。
妻も息子も娘も・・・
何もかもが空回りしはじめ、張り詰めた空気が突き刺さります。
苦悩しながら、懸命に生きていこうとする家族の絆を描いています。
膨れ上がるイギリスの労働者階級と社会的経済問題を浮き彫りにしたヒューマンドラマですが、映画の背景は今の日本の社会情勢にも当てはまり、酷く胸が痛みました。
また、ドキュメンタリータッチで描かれ話が進むにつて、最後はこの家族の話に引き込まれ応援する気持ちが湧き上がります。
監督ケン・ローチは現在83歳。
前作「わたしはダニエル・ブレイク」I,Daniel Blake(原題)を製作後に引退宣言をしたものの撤回して作った映画です。彼はイギリス人で様々な社会問題を描いてきました。
今回もどうしても伝えたかった本当の問題は何かを、映像の中で強く訴えています。
キャストもほぼ無名の役者をオーディションで抜擢し、ハリウッド映画ではつくれないような作品に仕上げっています。
映画館を出た後も映像がフラッシュバックして頭から離れない強烈な作品です。
今年のマスト作品のひとつになりました。
K maruo